成人記念写真/福岡県田川でロケーション撮影
本日ご紹介の主役は、美しいお嬢さんです。
お母さまから、お嬢さんの成人記念撮影をご依頼いただきました。
お嬢さんの学業との兼ね合いもあって、2月23日に福岡県田川でロケーション撮影を行いました。
ご挨拶のあと、早速撮影に入ります。
「どうしたらいいですか」と尋ねられましたが、軽く立ち位置を指定するくらいで、あとはお話しながらどんどん撮っていきますのでご心配なくとお答えしました。
お話しの内容は、たわいなことです。
起きたのは何時とか、その振袖を選んだのは誰とか、メイクの話とか。
お休みや学校のこと、オンライン授業のこととか。
話の合間に、目線を向ける場所を指定したり、立ち位置を変えたり、レフ版を調整したり。
良い表情の瞬間には、すかさず「いいですね、今の表情。そのままで」
「あぁ、すごくいいですよ。素敵です」
「うわぁ!とても綺麗」
時々モニターで、撮った写真を見てもらい、笑顔を引き出します。
その日の主役が、いかにリラックスしてよい表情を出してくれるかが大事です。
どんなに高いカメラや機材があっても、どんなに高い撮影技術があっても、よい表情を引き出すことができなければよい写真は撮れません。
よい表情を引き出すのはカメラマンの役目だと私は思っています。
そういえば、カメラマンになるとは夢にも思わなかった30数年前、私自身の成人式記念撮影は苦い思い出です。
わたくしごとで恐縮ですが、昔話にお付き合いください。
成人式当日に早くから予約を入れておいた田舎の写真館は、同じく予約したと思われる晴れ着姿の新成人たちが並んで撮影の順番を待っていました。
写真館での記念撮影は、私にとって初めての体験。
ドキドキしながら待っていると名前が呼ばれ、暗いスタジオに通されました。
カメラをいじっている疲れた様子のカメラマンは、私を見もせずに、気が滅入るようなグレーの背景紙の前に立つよう指示をしました。
それからが長いこと長いこと。
スタッフの女性が現れたかと思うと、私の振袖のたもとに厚紙を入れた。
ファインダーから覗いているカメラマンの指示で、彼女は袖を数ミリ単位かと思うほど微妙に角度を調整し続ける。袖がそんなに重要なのか?
着物のヘンなところに留められたクリップが気になってしかたない。脇のとこが引きつり、顔もたぶん引きつっていたはず。
ちょっと動いただけで、“重要な袖”の調整係が飛んでくる。指示なく動くな!ってことやわ。
「あごを引いて」「あ、引きすぎ」「顔の向き少し左」「あー、目線はこっちのまま!」「ほら、あごあご!」「袖!」「君やない、○○さん!袖!」。。。
そして「肩の力を抜いて」とか、もう絶対無理やわぁ!
時間にして30分くらいだったと思うが、カメラマンもスタッフも(私も)大変な思いをして撮影された写真が10カット。
緊張してガチガチになった私のしかめっ面が10カット。
どの写真も、にこりともしてない。
たしかに振袖の柄は綺麗に写っている。振袖はね。
しかし、この日のために綺麗に化粧してもらって、伸ばした髪を盛り盛りに結いあげてもらって(朝3時起きして)意気込んで撮影に挑んだというのに、借り物の振袖だけが際立った写真のために、私は大枚3万円も払うのか。
写真は要りません。捨ててくださいと言いたかった。が、小心者の私は言えなかった。。。
笑い話にもならない私の経験談は、大昔の写真館のことなので、今は違うでしょう。と思いたい。
一生に一度の成人記念撮影。
たしかに、振袖を美しく撮ることも大事でしょうが、主役は振袖ではなく、新成人そのひとです。
私はザンネンな成人記念撮影の経験をしたカメラマンなので、その経験を反面教師として、主役を間違えないようにします。
振袖やスーツを整えることに時間を費やすより、主役の魅力とよい表情を引き出すことに力を入れます。
お話をしながら撮影を進めていくと、最初は硬かったお嬢さんの表情がやわらいでいきます。
そして、こんな表情が出てくるようになります。
ふとした表情としぐさが大人っぽくてとても美しい。
まるで女優さんのようです。
私が指示をしたわけではありません。
お嬢さん本人も、意識してこんな表情やしぐさをしていません。
カメラマンに撮影されるのは、七五三のときに写真館で撮影して以来とのことですし、プロのモデルさんでもありません。
本人も気づかないよい表情というのは、リラックスしているときに自然と現れるように思います。
その瞬間を逃さず撮るのが私の仕事です。
「kiyomiさんに撮ってもらってよかったです!!」
お嬢さんからいただいたLINEのメッセージは、私にとって最高の誉め言葉でした。
こちらこそ、素敵な表情を撮らせていただき、ありがとうございました。